3 – IRON

うつせみ

訳の判らなさ具合が程よい塩梅

邦題は「うつせみ」だが英題は「3 IRONS」で、3つの鉄?なんのこっちゃ?と考えつつ観ていると、どうやらゴルフの3番アイアンということなんだと判った(道理でIRONがIRONSの複数形じゃない訳だ)。

BMWのデカバイに乗ってチラシ配りのバイトか?と違和感バリバリの開幕でツカミはオッケーだ。しかしすぐにそれは世を忍ぶ仮の姿だと判る。イヤ、世を忍ぶというよりも、それは本職の重要な仕掛けだということも判り易〜く説明される。
主人公は風変わりな空き巣とでも言おうか、昼間にチラシを鍵穴に張り付け、一定時間経過してもそのチラシが剥がされていない家に忍び込む。このあたりがかなり大胆で、夜まで待つというわけではない。
忍び込んで泥棒を働くでなく、壊れている家電を修理したり、なぜか洗濯板で洗濯をしてあげたりする代わりに風呂と食事とベッドを拝借するという生活を送っている。
そしてこの辺りで主人公が一切喋らないということに気がつく。おいおい、カウリスマキかよ?と。

例によってチラシが張られたままの家で大胆な一夜を過ごしていると、実は家の中に篭っていた女性にずっと見られていたということが発覚する。女性は怯えるでもなく叫ぶでもなくジっと見つめているだけだ。どうやらダンナからDVを受けているらしい。
気になる。
でもヤバい。
とっとと逃げよう。
しかしやっぱり気になって引き返すと、女性はお風呂で泣いている。
脱ぎ捨ててある服を洗濯カゴに入れ、似合いそうな服を並べてあげた。
ミュージックもスタートだ。
ゴルフボールも転がしてやれ。
お、投げ返して来た。

そこへダンナが帰って来た。
最初は猫なで声だが、すぐにDVが始まってしまうも、女性はあくまでも反抗的だ。そこでダンナのドテッパラにゴルフボールを打ち込んで制裁を加えて逃げることにする。そんな奴と一緒に居ないで、オレと逃げようぜ!とでも言うようにスロットルを吹かす。そして始まる愛の逃避行。
逃避行と言っても、今までやっていたことを二人で続けるだけだが、世の中そんなに甘くない。ついに通報され収監されてしまう。

この映画、何が良いかと言えば、
●主人公が終始一貫喋らない。
●ヒロインと二人になっても、二人とも喋らない。
●主人公たちのやっている事は犯罪なんだが、なぜか憎めない。
●一度忍び込んだ家にヒロインが出かけ、昼寝をするシークエンス。
という所だと考える。

物語のラストでスーパーインポーズされる「この世の中は、自分が見ているものが現実かどうかはわからない」というような意味の文章で、まるで「マトリックス」のようなことを言っている。ハングル文字の原題の意味は判らないが、そこが邦題の由来になっているんだろう。
たしかに後半はもうファンタジーかと思う様な表現になってしまい、お前は幽霊かよ?!とツッコミをいれたくなる。
ラストの文章はそのツッコミ避けの為のものなのではないかとも受け取れるのである。そこんとこがチト残念だった。

ハングル文字の原題は「空き家」という意味だそうだ。
»»鑑賞日»»2019/03/20

●原題:3 - IRON
●制作年:2004
●上映時間:88min
●監督:キム・ギドク
●キャスト:ジェヒ/イ・スンヨン/クォン・ヒョゴ
●お薦め度:★★★★

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