あらくれ

「驟雨」が「めし」と対をなすように、本作は「浮雲」と対をなしているように思える。
題名通り、男勝りな女のしたたかな生きざまをスピーディに活写した問題作（？）だ。問題作というのは言い過ぎだが、wikipediaによると、公開当時は成人指定にされてしまったという曰く付きの作品だそうで、今では考えられないような為されようだ。当然ながらその手の表現は一切ないのに、である。
しかしかなり本気の文芸大作のようで、三船こそ出ていないが、東宝が誇るスターが多数出演している。配役を見ているとクロサワ映画かと思えるほどだが、黒澤常連組はどちらかと言うと脇を固めている。どこでも常連組の加東大介は別格だが、志村喬や仲代達矢が出ているのは珍しい。
最高傑作とされる「浮雲」は非常に暗い終り方だったと記憶しているが、本作は似たような生々流転の物語でもサバサバした力強さをもって終っているのが大きな違いだろう。
»»鑑賞日»»2020/08/19»»U-NEXT