ハゲ鷹と女医
殆ど内容について情報を仕入れないよう努力して鑑賞に臨むという基本姿勢を導入している我がハオハオムーチョシネマでありますから、中盤になるまで、殆ど事件らしい事件も起こらず、短いカット割で羅列と言ってもいいくらいに弁護士と女医の日常を描いているので、これは恋愛映画だったかな?と思い始める頃、その裏に潜むドス黒い闇に気づく仕組みになっている。
主役の弁護士は交通事故で一儲けしている組織の一員で、喰うて行かにゃならんのでイヤイヤながらも、その仕事に甘んじている。やはりここでも弁護士は悪人の代名詞のように扱われている。
女医も一見清廉潔白なんだが、実は薬物中毒であったというのが判って来る。イヤ、冒頭からその表現はあり、判る人にはすぐにピンと来るだろうが、もしかして…と思っても何となく違うやろと思わせる雰囲気を持った女優さんだから、そのままスルーしてしまう。
映画の表現が本当なら、信号無視なんぞ当たり前というお国柄か老若男女こぞって当たり屋で稼ごうとしている。そこにハイエナのように群がる弁護士軍団がおこぼれを預かるように見せかけて、実は大きくピンハネしているという事実が炙り出されてくる。
そして急転直下のエンディング。これが前半のノンビリとした表現とのギャップがあり非常に効果的。やはりこのラストのための映画だと思える一本だ。
ちなみに原題の「Carancho」はグーグル翻訳では翻訳されなかった。本家グーグルで検索してみると、ハゲ鷹っぽい猛禽類の画像が出て来る。自分の思っていたハゲ鷹とはちょっと違う種類の鳥のような気がするが、まあハゲ鷹の一種なんでしょう。
このまま直訳で「ハゲタカ」だと某人気ドラマと被ってしまうので、この邦題となったんだろう。
»»鑑賞日»»2019/01/30
「Carancho」は「カラカラプランカス」という鳥にリダイレクトされる。鷹類に分類されハヤブサの親戚でもあるように書かれている。
日本語で「カラカラ」を調べてみると、ハヤブサ目となっている。「目」と「種」の関係がどうなっているのか判らないが、まあハゲ鷹ではなく、カラカラという鳥のようである。
「カラカラ」だろうが「カラカラプランカス」だろうが、どちらにしても腐肉を好む性質というのは共通している。ハヤブサはその名の通り、高速で飛ぶ空中ハンターだが、カラカラ系はものぐさだということだ。
ということで、この原題の直訳は「カラカラ」ということになりそうだ。勿論このカラカラは主演弁護士男のことを指しているんだろうが、「カラカラ」ではナンノコッチャなので、上記の推察とは逆に、「ハゲタカ」にあやかったネーミングになったのではないだろうか。
●原題:CARANCHO
●制作年:2010
●上映時間:107min
●監督:パブロ・トラベロ
●キャスト:リカルド・ダリン/マルティナ・グスマン
●お薦め度:★★★★