タイピスト!
フランスの片田舎から地方都市に出て来た娘さんが、雇用主に言われるまま、タイプライターの早打ち大会に挑戦して遂に世界チャンピオンにまでなってしまっちゃうというサクセスストーリーを、父親との確執や恋をからめて描いたポップでキュートな映画。
何と言っても主役アイテムであるタイプライターのプロダクトデザインがいい。多分、当時のものをそのまま、もしくは再現だかして使っているのだと思われる。
そして最も感激したのは、フランスでの全国大会に出場するためにパリへ出て来た時のエッフェル塔あたりでの車の流れのシーンだ。本編とは何ら関係のないシーンで申し訳ないが、ここで動いている車たちがとっても素晴らしい。
その車種名が何であるかなんてのは全く存じないのだが、日本車も含めて「あの頃」の車のデザインは独特のものがある。なんで、あの頃のデザインをそのままにエンジンや足回り等だけを現代のものに替えた車両を販売しないのか常々不思議に思っている身としては、そんなアノコロカーのオンパレードのシーンに目が釘付けになった。
閑話休題。
原題は「POPULAIRE」で、これは劇中で登場する、早打ち大会の有力なスポンサーもしくはパトロン的な会社のタイプライターの製品名である。しかしどちらかと言うと、この会社はあんまり良い風には描かれていない。そこはけっこう斬新で良いと思う。
しかし対戦相手のチャンピオンを如何にもなステレオタイプに描き過ぎな気がする。そのほうが主人公に感情移入しやすくなるのは間違いないが、なんかあざといなという文字が浮かんでしまうのも否めないのがチト難点ですな。
»»鑑賞日»»2019/01/17
以下、要約です。
○タイプライターは当時の物を世界中から探して来たが、新品に見せるため再塗装を施した。
○早打ち大会は本当にあったが、劇中ほどの規模のものまであったかどうかは言及されていない。
○当時のタイピストは職業婦人の花形だったが、早打ちチャンピオンがアイドルの様にもて囃されるのは監督のアイデア。
○50年代にタイムトリップできる映画を作りたかったというのが監督の意図。つまり自分は見事にその作戦に引っ掛かったという訳だ。
○主人公が使う「Populaire」は特注品であり、実在しないものらしい。あの会社も架空っぽい。
○対して父親から贈られた「Triumph」はドイツの実在するメーカー品で、意味は「勝利」。ちなみに「Populaire」は「大衆」。
○ゴルフボール形式のタイプライターは、実際に1961年にIBMが開発し、世界を席巻した製品だが、主人公がそのアイデアを売り込んだというのはフィクション。「バック・トゥー・ザ・フューチャー」で、マイケル・J・フォックスが若きチャック・ベリーに「ジョニー・B・グッド」を聴かせるのと同じ様なもんか。
つまり、実話をリサーチしまくって作った映画だけど、映画自体は実話ではないということだ。
●原題:Populaire
●制作年:2012
●上映時間:111min
●監督:レジス・ロワンサル
●キャスト:ロマン・デュリス/デボラ・フランソワ/ベレニス・ベジョ
●お薦め度:★★★☆