THE MULE

運び屋

老人になってからのこの監督の作品は、一切の外連味けれんみを排除しストレートに物語を描くのが、その特徴だと考えている。
今作もその例に漏れず、90歳の老運び屋を真っ正面から描いているにすぎない。
この話の最大の特徴は、90歳という超高齢爺さんが運び屋というやんちゃな職業に従事しているということだろう。その一点だけでかなりインパクトがあり、他に外連味を加えるのは逆に邪魔だ…ということかもしれない。
実話からヒントを得たとのことで、全てが事実のママだとは考え難いだろう。だから爺さんのバックボーンや家族との軋轢、また、家族以外にはウケがよいユーモアのセンスという性格設定などはフィクションもしくは脚色されているのかもしれない。

新しく来たボスが気に入らないから、懐いてきた若造を駆使してひと泡ふかせたるで…というようなありきたりの展開になるのかと思いきや、至極まっとうな当たり前の結末になるという老クリント・イーストウッドらしいお話でした。人徳のお陰か、組織の強面こわもてにしか見えなかった若造が良い奴に思えてきたりする、その飄々度合いの高さあたりが見どころに思える。
»»鑑賞日»»2019/10/30

●原題:THE MULE
●制作年:2018
●上映時間:116min
●監督:クリント・イーストウッド
●キャスト:クリント・イーストウッド/ブラッドリー・クーパーマイケル・ペーニャローレンス・フィッシュバーン
●お薦め度:★★★