UNFORGIVEN

許されざる者(1992)

VHSの昔に一度観たことがあるようなないような気がしていたが、全く内容に記憶がないので、初見なんだろう。イーストウッドの西部劇ということでマカロニか非マカロニ程度でしか分別していなかったのでごっちゃになっているのだ。

これは素晴らしい。最近観た「駅馬車」や「リバティ・バランスを射った男」なんかが消し飛んでしまった。撮影技術の進歩もあるだろうが、やはり圧倒的な臨場感の違いがある。さらにそれに加えて、作品のテーマがひしひしと伝わって来る。
全然甘くない、むしろ非情と言える展開が心に突き刺さる。ここまでやることによって、暴力だの復讐だの仕置きだののバカらしさや無意味さが伝わって来るんだと感じた。
結局題名通り、主要登場人物全員が「許されざる者」だということだろう。誰か一人でもキリスト教的な汝の隣人を許し給えみたいな精神があればこんなことにはならないんだろうが、こうなってしまうことが、まあ人間的とも言えて、「映画」として成功している。
倫理観を棚に上げて書かせてもらうと(以下ネタバレの可能性大)、当たり前の作劇なら、賞金稼ぎ3人の内、主人公が倫理的なことを言い出し内輪揉めが起こり1:2の撃ち合いの末、主人公と顔を傷つけられた娼婦が手に手をとって立ち去る…というのがありきたりな展開だろう。ところが本作は主人公が率先して非情に徹し賞金首を挙げるのが意外な展開であり、この「映画」の最大の特徴だ。賞金首たちはワルには違いないが、ちゃんと詫びを入れているんだから仕置きに掛けるのはやり過ぎだろう。
むしろ他の2人が怖気付いているのに、怒りが爆発してついに酒の力を借り、本当のあの男・・・になってしまい殺戮の限りを尽くす。てて加えておとぎ話のように『西海岸へ行き商売が成功しましたとさ』で締めくくられるとは、意外なのにも程がある。それもこれも題名の「許されざる者」という伝家の宝刀があるから許される作劇なのだ。拍手。
»»鑑賞日»»2019/07/25

●原題:UNFORGIVEN
●制作年:1992
●上映時間:131min
●監督:クリント・イーストウッド
●キャスト:クリント・イーストウッド/ジーン・ハックマンモーガン・フリーマン/リチャード・ハリス
●お薦め度:★★★★★

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