ヨーロッパほぼ一周食い心棒の旅#36 イア

うまか不思議ギリシャ篇ロゴ

ギリシャ第26日目 6月14日(水)

教会の志村喬・ペペロンチーノ

サンドリーニ島・イア

昨日の貼り紙が効力を発揮したのか、たぶんあれ以上は減っていないジュースと、パン、バター、はちみつの朝食を部屋で食べた。今日はテラスが満員御礼の札が貼ってありそうだったもので。おばさんに16000払いパスポートを返してもらい、アキモト氏はもう出たのかと訊くと、もう出たわよということだった。そうですか、何かあれ以来ケハイがないなーと思っていたけど、今日までいることはいたんだ。もう今頃は空の上なのだろうか。ふと空を見上げると、雲は多い目だが晴れている。

アメリカンエキスプレスでが両替を必要としている。夕べ購入の布が相当のものだったに違いない。いったいどこにあるのやら、ツーリストポリスにでも訊かな判らんでと思うも、メインストリートのあんまり通らない側ですぐに見つかった。
バスに乗ると一番うしろのシートが空いてるよと地元の中学生が教えてくれた。昨日は小学生に席を譲ってもらったし、同じことの繰り返しのようだ。どうやら地元の子供は料金が要らないように見える。イアの村に着くとスーパーとパン屋を発見し、しめしめと思った。
金髪ねーちゃんの昨日の口ぶりでは、そのまま部屋に直行しろという感じだったので、レセプションは無視して下に降りた。たしかこの辺とキョロキョロし始めると、向こうからお兄ちゃんがやってきて、あなたがたの部屋はこちらですと案内してくれた。あーここここ、5号室。中に通されて「昨日見に来た人たちですよね、今日はエラい風ですねん、おッ、花びらが入ってきますね。パスポートを預からせてもらえますか」と矢継ぎ早に喋ってくる。
パスポートを渡すと兄ちゃんは出て行った。部屋を点検する。冷蔵庫のプラグをコンセントに差し込み、持参の水を入れる。ナベ、フライパン、皿、ナイフ、フォーク、コップとひと通りのものはある。火を点けてみる。おー、ちゃんと点く点く。さて、スーパーへ買い出しに行こうか。

バター
なぜ、オリーブオイルではなくバターなのか?恐らくオリーブオイルだと大きすぎて余った時に持ち歩くのに困ると計算したんだと思う。

バター、パスタ、スープブイヨン、にんにく、じゃがいも、レモン、米、ジュース、ビール、ザジキ。とりあえず昼は、バターとザジキとパンにジュースだ。食べ始める前に大鍋で湯を沸かし始めたのに、食べ終わってもまだ沸かない。なんちゅうガスや。ギリシャだからこんなもんかいのう。ようやく沸いたので全部熱湯消毒した。あー、喰った喰ったとベッドに横になると寝てしまった。外はカンカン照りなのに中はヒンヤリして寒いくらいだ。寒さで目が覚めたので作務衣を着込んでから再び眠りこけた。
あ、もしかしてさっきの兄ちゃんはニセモノでパスポートを盗まれたかもしれんという夢をが見たので、ボスおばさんに「すんません、両替したいんでパスポート返しちょくれー」と言いに行ったら、ちゃんとボスおばさんが持っていて渡してくれた。

志村喬
改めて説明するまでもないが、シブいおっさんからやらしい親爺まで演じ分ける、クロサワ映画には欠かせない日本を代表する名優。

両替に行くふりをして外出をし、出くわした教会にフト入ってみたら、志村喬みたいなおっさんが聖書のようなものを唄うように読んで渋いノドを披露している。
ここの壁画はかなり新しく天井から壁から柱からコッテリと描きまくっている。こういう宗教関係のものを見てきても今まで正直どうでもいいと感じていたが、音との相乗効果からか、初めてすごいのうと思ってしまった。思ってしまったと同時に祭壇の奥から本物の神父さんが例のボーシをかぶり、お香のようなものを片手にケムリもくもく、あちこちに振りかけつつ登場した。同時に低音の志村喬に高音で見事にハモりながら、さらにぐるぐるとあちこちにケムリをもくもくさせている。
突然赤Tシャツの兄ちゃんがギーガタンと入ってきて志村喬の横に座り「あー、今日はオレの番やったのにすっかり忘れてたわ。ちょっと遅れたけどまーえーやろ」とでも言ったかと思うといきなり赤Tもハモり始めた。んー、さりげなく3人唱している。まるで歌舞伎の幕間の唄か、狂言でも見ているようだ。少し驚いたぞよ、わしは。
パン屋とスーパーで買いもんして、部屋に帰って冷蔵庫に仕舞い、野菜スープを作ろうではないかと仕込みを始める。
じゃがいも、ピーマン、人参、ナス、トマトをバターで炒めて、ブイヨンぶちこみ、ハーブぱらぱら。ちょっと味見をするとなかなかの味であったので、フタをして夕陽を見に行く。
ナイススポットはどこもかしこも人でいっぱい。今日の海ぎわはモヤっててイマイチなのではなかろうか。昨日の雲間の光、一昨日の夕陽のほうがよかったような気がする。再度スーパーで水、ジュースを買って、いよいよスパゲチーノ、ペペロンチーノもどきを作るのであった。

こぶ茶
改めて説明するまでもないが、こんなこともあろうかと日本から持ち込んでいた。他にも旭松の「生みそずい」も手持ちの札として仕舞っている。これは貴重品だ。

お湯がモウこれでもか!というくらい沸かなかったので、すでに10時を回っている。バターでじっくりニンニク炒め、やっと茹で上がったパスタぶちこみ、箸でまぜまぜ、ハーブぱらぱら、こぶ茶さらさら。茹で汁少々ジュっといわし、ハイできあがり。ん〜、うまいではないか。野菜スープも上出来だ。ナスが日本で喰うものと同じ味だ。箸で食べてると、もうこのトンネル部屋が我が家のように思えてきた。
が米の研ぎ汁で洗いもんをして、ちょっと外に出てみた。ほぼ満月の月が煌々と照って、おだやかな海が綺羅綺羅と輝いている。
シャワーを浴びて体を拭くと、どエラくぬるぬるする。なんじゃ?バスタオルを洗ってみると、泡が大量に発生する。どうやら濯ぎ忘れているのか、水が勿体ないからこれがデフォルトなのか。しょうがない、これもギリシャなんだから。ふとドアの上の透かし窓を見たらお月さんがちょうどそこにあった。


◉PRÉSIDENT バター

バターと言えばこのプレジデント。フランスの会社だ。日本では考えられない安さで売っている。このあとのフランス滞在中は二日で一箱食べていた。早く貿易自由化にならないかな。

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