強 風 ・ ビ ッ グ ボ │ ト ・ デ ビ ッ ド 大 森
う ま か 不 思 議 ギ リ シ ャ 篇 ● 6 月 2 日 ● さ ら ば モ ネ ム バ シ ヤ
「クレタ島まで2枚」 ツーリストクラスは一人3526ドラクマ。あいかわらず息子にギャンギャン言ってるオバハンにそう言ってチケットを買った。例のモービルステーションでのことだ。 「今夜はよく揺れるかい?」 我々は密かに恐れていたのだ。 今夜も先日のフライングドルフィンのような揺れだったら最悪の事態ではないか!と。 「ぜーんぜん。ビッグボートだからね」 おー、ポシャドーンの神よありがとう。このオバハンの言うことを信じよう。
7時も回ったので新街でのいつものタベルナに海側から向かうとテントも畳んでいる。こりゃやっとらんわ。反対側に回ってのぞくと中で1組食べているようだ。じっと見てるとおばさんやってきて、愛想もよろしくどーぞどーぞと招き入れてくれる。今日は兄ちゃんたちはいないようでシェフ自ら運んでくれた。
隣に来たアベックは大量に注文しコーラを4本飲み、大量に残して出ていった。いつもの兄ちゃんたちも帰ってきて、いつもじゃない兄ちゃんに勘定払い、いつもの兄ちゃんにバイバイして、店員日替わりスーパーでコーラ350cc/130ドラクマ買って三角地帯で一気飲み。げぷー。 とりたててすることもないので、モービルステーションで待つことにした。 こここそ地の果てと呼ぼう。 ここにいる生き物でうるさくないものは、犬と年寄り夫婦と我々のみで、従業員親子、客だか近所の人だか不祥な人々、すべてがギャンギャン喚き散らしている。いったい何をそんなに大声で怒鳴るのか。喧嘩しているのかと思ったら笑い出す。このモービルステーションという空間だけ異次元空間にたたき込まれているのではないか。そのうち我々もガナリだすかもしれない。勘弁してくれー。この6日間の静けさすべての反動が今ここに集約されているのではないか。 10時半になっても何も起こらない。犬を見ていると、ここ2・3日よく見かけた東洋人らしき人のカバンが目に入った。名前が書かれてある。デビッド大森...ふーむ、日系4世か?なかなか近寄りがたい感がある。サングラスもかけているし、ちょっとウォン・カーワイに似ている。 10時45分。いっせいにみんなが立ち上がった。ドラ息子もヘルメットを頭に載せバイクに向かう。年寄り夫婦も店を出る。そろそろか。船が来てるか見てみよう。立ち上がるとドラ息子が入り口で「ゴートゥーポルト!ポルトー」と怒鳴った。ポルト・・・港か。ザックを担ぎあげ食料を持ち、水の空きビンをさりげなく忘れ、外に出た。
外は満点の星空。モネムバシア山はまっくろにそそり立っている。黒い海の上にはコーコーたる灯をともした我がゴーカ客船ポシャドーン号がゆるやかにこちらに向かっている。見たところ揺れているようすはない。しかし桟橋の地面はくろぐろと濡れ、そうとう波があったことを物語っている。出迎えの人、乗りこむ者が待つ中、ポシャドーン号はボーッと長く鳴き、緩やかにとは言えないが着岸した。かなり降りる人降りるバイク降りる車があり、クイックリー!という声が聞こえる中、そそくさと乗船した。年寄り夫婦はどうやらベッドのある部屋(さしずめ2等寝台Bといったところか)に行き、デビッド大森夫妻とその仲間たち、そして我々はさしずめ2等サロンといった風情の部屋に陣取った。
この部屋でよいのであろうか?船内を探索した結果、上にはもう少しマシなサロンがあることをつきとめた。もしかして我々はこっちのサロンなのではなかろうか?あんなに高い料金なんだもん。その素朴かつ厚かましいギモンを船舶関係の人らしきオッサンに訊いてみる。結果はこの現在只今の部屋でゆっくりとお寛ぎくださいということだ。がっくし。 瀬戸内のカトー汽船のように雑魚寝できるよう毛布を並べてくれていることもなく、やっぱりただのサロンだ。まぁイスというより、ソファの部類に入れてもよいかなと思えるシロモノだっただけマシかもしれない。コミコミではないので4人掛けに2人で座ってトランプもできちゃうからもしかしたら天国かもしれない。 ナナメ右のおじさんたちはバックギャモンを楽しんでいる。前のおじさんはオレンジジュース(その場で絞ってくれるやつ。ぜいたくだ)を飲んでいる。そして右ではドラ息子とデビッド大森が話をしている。どうやらデビッドのおっしゃるにはユナイテッドステイツ・イズ・ビッグだそうだ。端から端は12時間だ。ドラ息子はノープロブレムエンジョイだそうだ。レディーが待っているんでそろそろ失礼するよとデビッドは去った。船はほとんど揺れない。おおポシャドーンの神よ、ありがとう。
(c)1995-2002 HaoHao
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