う ま か 不 思 議 ギ リ シ ャ 篇 ● 6 月 1 日 ● モ ネ ム バ シ ヤ
7時50分に起きて8時きっかりにブレクファストルームに到着すると、さすがに今日は先客がいた。 しかし彼らがネスなんたらを注文してカップをカチャカチャしているのは、外のテーブルではあったが実はニ等席と私が命名している席だったので、今日も無事に特等席を占領することができた。 遅くきた人々はトーストしてもらえなくて、ふつうのパンになっているようだ。ごきげんおじさんの忠告を真面目に守ったボクたちは、おかげで今日も今日とてごきげんな朝食にありつくことができましたとサ。神様ありがとうアーメン。
9時半ごろホテル下の廃虚を抜けて、第2スイミングポイントに行く。誰もいない。波もない。しめしめ。ここを20mほど泳いだ所に見える半径2mほどのエメラルドグリーンに輝く部分がそれである。まったく不思議な部分ではある。なんでココだけこんなに気持ちよさそうな色なんだろう。しかもまんまるに!ここに浮かんでいたらUFOか何かに連れ去られるのかもしれない。ちょっと未知との遭遇してしまいそうである。ただ、このポイントに着くまでの道のり(海だからナミノリか?)はちょっといただけない。日本のそこいらの海なんかとは比ぶべくもないが、石や海藻のせいで割りとずず黒い。 まあ、そんなこんなで泳いでは休み、休んでは泳ぎしていたら、マルバシアホテルの宿泊客全員が揃ったのではないか思えるほど、いっぱいの人になった。ドイツ語や英語の入り乱れる会話にはついて行けず、男は黙ってサッポロビールなのであった。
しばらく泳いでいるとハラがへり、ムショーにチキンラーメンが食べたくなった。一人海のまん中で「ハラへった」とつぶやく。小さくつぶやいただけなのに、岸にいる人々にはまる聞こえだったそうだ。海なのによく響く。入江のようになっているからなのか。そう言えば昨日、城壁の上で絵を描いている時も海でしゃべっている声がおどろくほどよく聞こえたのだ。 海辺のシャワー(もちろん無料)を浴びて帰り、部屋で本格的冷水シャワーを浴びた。まだ停電中なのだ。いそいで着替えして新町に向かう。早くしなければ店が閉まってしまう。先日来の道路掘り返し工事はどうやら、電力ケーブルを入れる作業のようだ。ブルがケーブルを巻いた巨大糸巻きをブラさげて通り過ぎるのを、口を開けて見送った。
カフェから下をスケッチ
今日は風があるだけマシかもしれないが、やはり暑い。やっとのことで町に到着したら、今日も無口なおばさんのスーパーは閉まりかけていた。しょうがないのでハガキをポストに入れ、パンを買ってから、昨日のタベルナに入り、スタフドトマト、ジャガイモとズッキーニの焼いたもん、グリークサラダ、ビアアムステルを注文する。今日は人の入り上々。空きっ腹に飲んだビールがこたえてヘロヘロだが、いたくうまかった。 100のチップを置いてエファリストーと立ち去ろうとすると、にーちゃんはなんかテレていた。昨日行ったスーパーで水とチーズを買う。ここは行く度に店員が違う。帽子を買った釣り道具屋で絵葉書を買う。ここの方が同じものでも旧町よりも30安い。いったん店を出たが、やはりアイスクリーム200と300を買った。 まあまあの味のアイスを食べながらホテルに帰ると電気は復活していたけれど、冷水シャワーでさっぱりして作務衣を着てベッドでごろんしたら眠っていた。
誰が呼んだかハエのブンブンに起こされると6時15分だった。7時半にカフェに降りて藤沢周平を読む。 今日はテレサ・ベルガンサというメゾソプラノのおばさんの音楽がかかっている(らしい)。 この曲はなんというのか。今ここに流れているこの唄、残照というにはまだ明るい日のひかりに煌めく海、口に含んだフラペーの苦さ、すべての要素が重なりあい溶けあって、今ぼくたちはこれまでにない(もしかしたら、ぼくたちの人生ぜんぶの中でさえも)もっとも記憶に残る時間にいるのかもしれない。 カイーク船が灯りをつけて通ってゆく。 ずいぶん暗くなったので礼を言ってカフェを出ると、レセプションの明かりのこちら側にいたごきげんおじさんと目があった。 「カリスペーラー」 大きく手をふってあいさつしてくれた。
(c)1995-2002 HaoHao
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