う ま か 不 思 議 ハ ワ イ イ ─ ハ ワ イ イ 島 篇 その4
パプナビーチ駐車場にて
とにかくどこにも寄らなかった。 宿のあたりはどんよりと曇っていたのに、コナを抜けるころからぐんぐん晴れまが拡がってゆく。もしくはこちらが蒼壁に突入して行っている。日に焼けた腕がいたい。 制限速度めいっぱいで丁度60分、パプナビーチに車を停めた時はまごうかたなき碧空だった。 と、いくぶん文学的な気分になるのも宿を出るときから海パンをはいてきていたからだ。 ワイキキのそれに比ぶべくもないが、そこそこ人はいる。手ごろな岩場の陰を陣どるとチャチャっと服をぬいで、あんまり人目に腹をさらさないようにスバヤク海に進水した。これぞハワイという海だ。この2・3日検討した結果、泳ぐのはここしかないと決議しただけのことはある。どこまでもブルーだった。
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ありがたいことにシャワーは無料だ。ただ、着替えができそうなところがない。びちょびちょになったビーチサンダルが砂を巻き上げないように歩いて、ちょっとした木陰で堂々と着替えてやった。 ひるめしは大谷さんお勧めのプリンスホテルでバイキングでも張り込んだろかと、着替え荷物一式を車に放り込み出発した。このパプナビーチはどうやらそのプリンスホテルに直結しているらしく、噂によるとプライベートビーチもあるらしい…というくらい近いはずなのだけれど、入り口がなかなか見つからない。 両三度行ったり来たりをしてようやく見つけた。 ホテルは海側だから入り口も海側とばっかり思っていたのが間違いだった。 ゲートでレストランと申告して踏切りをあげてもらい、登ったり潜ったりして、フロントマンらしきおじさんが屯しているフロント前に車を寄せる。 「アローハー」 おじさん(モーガン・フリーマン似)が車の窓まで、ていねいに小腰をかがめてあいさつをしてきた。紋次郎なら小腰をかがめて会釈を返すのだろうが、車の中ではかがめられない。 食事をしたい旨を伝えると、もう2時をすぎているから、プールサイドで軽い食事しかございませんという言葉が返ってきた。 う〜む、そうではないのだ。今回はちゃんとしたものをくってやろうというハラになっていたのだ。一瞬テと顔を見合わせてから、ノーサンキューとモーガンおじさんに言うと、にこやかにオゥケィーとさよならをした。
ベリーホット… その昔、多岐川裕美がCMに出ていた頃にあったカゴメトマトジュースのうちのひとつに、トマト&ベジタブルというのがあって、そのパッケージに「very HOT!」という文句があった。たしか高校生の頃だったと思うが、「そうかぁ、辛いっちゅうのはホットつうんかぁ〜」と感心したハシモト少年は、その図式を勝手に決めつけていたが、正しいのだろうか?もしかして「スパイシー」とかじゃないのだろうか…
結局コナに戻る途中にあるワイコロアというホテル自体が村になっているようなエリアにある、メキシカンのファストフード屋でお茶を濁してしまった。 ここは観光客御用達のみやげもん屋の集合体といったところで、それなりにちょっとだけ高級っぽい造りにも見えなくもないレストランもあったが、時間が時間だけにもう支度中というやつになっていた。開いていても入りたいとは思わなかったろうが、とにかくワンサとあるファストフード連合艦隊の渦に雪崩れ込んだ。 さんざん物色した挙げ句、ただのチーズホットドッグを注文してしまった。 頼んだものは番号を呼ばれて受け取るシステムだ。いつもの癖で作るところを観察していると、なにもかも電子レンジでチン!ですませているようだ。まあしょうがないわなと受け取り、モトはとらにゃーとトッピングをゴンゴンしていると、「これちょーだい」とかん高い声が聞こえた。 ふりむくとナイスミディなおばさんが、あろうことかわしに向かって上の電光看板をゆびさしている。 現地日系人のフリをして無視してもよかったのだが、「いや、わし、ちゃいますよ」と言ったのに、まだこっちを向いて「これ辛い?」とか「いくら?」とか訊いてくる。「ちゃいます」というのが通じんのか?「ワタシハー、ココノオミセノー、ヒトデハー、アリマセーン!」とでも言わんとわからないのか? しかしここはぐっと我慢して、兄ちゃんに「ベリーホット?」と看板をゆびさして訊くと首を横に振っている。値段はレジを見たらわかるやろと数字をゆびさして「13ドル出したらいいんとちゃいますか」とお教え申し上げると、ナイスミディはいきなりT/Cをビリっと破いてしまった。 しかーし、レジの横にはT/Cは扱っておりませんと書いてあるように思われる。訊いてみるとやっぱりその通りだった。 「あらぁ、現金7ドルしかないわぁ」だそうだ。 代わりにソーリーノーサンキューと謝ると、ナイスミディは礼の一言もなくブイっと去って行った。おい、おばはん、えーかげんにせーよ!とフツーならエライ腹のたつところだが、わしってやっぱりちょっとエライんちゃう?と妙に感心してしまったのであった。
エスプレッソ… エスプレッソと名のついているものは大体ちゃんとしているように思える。コナコーヒーで有名なハワイだけれど、いわゆる普通のコーヒーはどうもわしにはうすすぎて、もひとつなのだ。ところどころにエスプレッソスタンドなる店を見かけるので、ギリシャよりはましか…
ようやくこのあたりで、店でのあいさつというものに慣れてきた気がする。よく映画とかで見かける「ハァ〜イ」はちょっとカマっぽくて気色悪いので抵抗があったのだが、観察していると、男の場合は、日本語で返事をする時に言う「ハイ!」というコロアイがいい感じだ。この時、相手の目を見ながらだと申し分ないようだが、そこまではまだ成長できない。
さてそんなこんなで、もとからなのか、ナイスミディのせいで冷めてしまったからなのか、チーズホットドッグはうまくなかった。パンもソーセージもフニャフニャなのだ。モスバーガーのほうがうまいのは言うまでもないが、よっぽどドトールのジャーマンドッグ190円のほうがうまい。 食い終わって、その隣にあるジューススタンドで、トゥーダボーエスプレッソズプリーズと頼むと、おばさん(西洋系)はとてもごきげんな様子で注文を聞いてくれ、なんの支障もなく、大きいサイズのエスプレッソ2つをいれてくれたのだ。 さっきのメキシコ屋の兄ちゃんもわるくはないと思うのだが、いささかアイソというものがなさすぎる。愛想悪くても味がよければヨシとしていたのだが、これじゃいいとこなしだ。 そして更にその隣のデイリークイーンでアイスを買ったら、これまた極端にブアイソ。そういうところに限ってか限らずか、チップよこせ!とこれ見よがしに1ドル札を入れたビンを置いている。 うーん、何に対してチップを払うのだ?だいたい2ドルや3ドルのものに対してチップを払うとすると、割合からしてコインになってしまうけれど、コインは失礼だというし、まさか1ドルは払いすぎだし、だいたいファストフード店でチップはいらないのではないか?観光客をあてこんどるのに違いない!とジャスイマンになるのであった。
計り売り… こののち近所の無印良品の店で同じシステムの筒に入ったパスタ売りのコーナーを見かけたが、すぐに姿を消してしまった。日本ではあまりうけないのだろか。
こないだ見つけていたコナにある自然食品のスーパーマーケットに立ち寄り、テのお買いもの欲を満足させた。おみやげと称していろんなものを買い込んでいる。 特筆すべきは、アンジェラの朝食スペシャルであるところのシリアルの源と思われるコーナーがあることだ。おそろしく豊富な種類を取り揃えている。しかもちょっとずつパッケージされて並んでいるなんてケチなことは言わず、呑み屋でお酒を計り売りするようなシステムの筒が上にズラリと並び、そこをプッシュして各々好きなだけ買えるようになっている。さすが本場やのうと恐れ入った。 とかなんとか言いつつさらにスーパー行脚は続く。 ケアウホウのスーパーだ。こないだウエンディーズに入ったところだ。
ケアウホウのスーパーからの夕景
いまひとつ食べたいと思わせるものがない。うまか不思議などと言ってもチト食傷気味になっている。 そんななか、ちょっと珍しい(なんてほどでもないけど)システムを利用してみることにした。デリコーナーでサンドイッチをオーダーメイドしてくれるみたいだ。 いろいろ言葉に支障はあるが、それがまた楽しいというもんである。書いてある文字と実物と身ぶり手ぶりで吟味したあげく、白パン(ホントは全粒粉を頼んだけれど売り切れだった。それにしても発音が難しい)にローストビーフ、ペッパージャックというチーズ、レタスにトマト。デザート(?)にポテトチップスの小袋がついてくる。おまけに好きな色を選ばせてくれるというので、黄色を頼んだ。〆て3ドル半くらい。 ここのお兄ちゃん、なかなか愛嬌があって、昼のメキシカン屋やDQの店員に爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ。白いシャツに茶色いキャップ、前掛けをして、まるでハーゲンダッツの店員のようだ。頼んだ品を作りながら細かいディテールまで訊いてくる。辛子はどうする?マヨネーズは?というところはたこ焼き屋の店員のようだ。辛子のマスタードは聞きとれたがマヨネーズは「メイヨ」と発音するらしく中国語かと思った。
今日はなんとか日没までに宿にすべりこむことができた。ここの夕日は名物となっているそうなのだ。庭の先っぽのポイントから、海へと沈む夕日を見るが、あまりにも当たり前すぎて、それほどでもないのであった。それはきっと生まれついての無宿者じゃあござんせんからでしょう。
(c)2001-2002 HaoHao
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