う ま か 不 思 議 ハ ワ イ イ ─ ハ ワ イ イ 島 篇 その5
1ヵ月もの… 本編では7ヵ月も行っておきながら、いざこの場になると、やはり“も”と思ってしまう。
朝食は少なからず緊張した。 カリフォルニアの田舎町(らしい)在住の教師夫婦(推定30代後半)、ドイツ南部からやってきた大学教授風のおじさんとその妻(60前後)で、三国会談だった。 ドイツおじさんは見事なルーカス風のヒゲをたくわえ押しだしも立派で、ギャグを飛ばすほどエーゴも堪能のようだ。おばさんも追随してツッコミを入れているから恐れ入る。 なかなか会話についてゆけない。 カリフォルニアの妻は英語が専門で、クラスの半分はメキシコ人の子供が占めているので、非英語圏の人間の扱いは慣れているらしい。1ヵ月もの間ハワイに滞在するそうだ。我々にもわかりやすいように、ゆっくりゆっくり喋ってくれた。にもかかわらず、曖昧にしか理解できない。昨日まで、わしってエライんちゃう?と思っていた心は粉々に撃ち砕かれるのであった。
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UCC… どうせならHaoHao御用達のドトールであったらもっとよかった。 正真正銘の… 勝手な想像です。
アンジェラは、ハワイにまた来たらうちに泊まりなさいよと送りだしてくれた。 初日にアンジェラんちの場所を尋ねたコーヒーファクトリーに寄り道してエスプレッソを頼む。例のB&Bをやっているというおじさんはいなかった。せっかく『先日はありがとう』という英文を調べていたのに…。かわりに日本人らしき兄ちゃんがアロハーと出迎えてくれた。 このファクトリーはなんと天下のUCCの工場であることがわかった。兄ちゃんも正真正銘の日本人で、ハワイ好きが高じてここで働いているらしい。 UCCの工場というと、もっと巨大で最先端、近未来のようなものを想像してしまうが、ここはとてものどかで、ぜんぶ手作業でやってますというように見受けられる。奥がちょっとした資料室のようで、そこで見たパンフレットに、そこを南に下ったところにきれいなビーチがあるらしいという情報を発見したので行くことになった。
けっこう曇っています
駐車場が5ドル。アロハーとおっちゃんが出迎えてくれた。きのうあたりから、なぜかアロハーと挨拶されはじめたのはなぜだろう。 ここは観光コースに含まれているスポットのようで団体さんがバスでゴンゴン乗り付けている。しかし例によってビーチと呼ぶにはいささか抵抗がある海辺だ。日本で言えば民族村といった風情で五平餅かなんかを売っていそうなところだ。 海は岩ばかりだが、こちらは自然公園といったところで、魚やカニは岩場の水たまりに、そしてほんの3メートルほど沖には海ガメが浮いている。「あっ!海がめ!」と叫ぶとプイっと潜って沖へ逃げてしまった。
シェブロン… ここは日本人にはなじみのないブランドだが、こちらでは一般的なチェーン店のようだ。日本で言えば出光といったところか。アンジェラんちに行くための説明文に目印としてシェブロンがあったけれど、これが何なのかはその看板を見るまでわからなかった。
アンリーディッド プリーズを付け加えるのも忘れなかった。やはりこれは予想通りいわゆるレギュラーガソリンのことのようだった。
いよいよセルフでガソリンを入れる時がきた。 かねて目をつけていたシェブロンというスタンドに行くことにした。 No.1に車を停め、キャッシャーへ。 「ハイ! ガソリン、ナンバーワン、プリーズ!」と言うと見事に通じた(当り前か)。満タンですか?と訊くので「イエース!」と答えるとクレジットカードは持っていますか?ときた。ホイきたと差し出すと、ではこちらへアイヘルプユーと手取り足取り教えてくれた。難なく満タン完了し、〆て13ドル00セント。おばさんはとても明るく親切だった。やはり開口一番大声のハイ!がいいのかな?
おとといのローズカフェまで飛ばしランチ。 カウンターのおばさんはおばあさんに、厨房のおばさんはおじさんに代わっている。 わし:テリヤキチキンバーガー、テ:オノという魚のグリル。 テリヤキははるかにモスのほうがうまいが、ここの内装はアメリカ田舎町の鄙びたカフェという感じでとてもよいのだ。デザートにクッキーを食べた。
カフェローズの窓かざり
禁断の休息中です
次にめざすはグリーン、ではなくブラックサンドビーチ。 ここは駐車場代はいらなかった。 少々荒い波だ。砂も絵葉書で見るほど黒々とはしていないが、たしかに黒い。これはよく見かける溶岩が砕けて砂になったものなのだろう。その砂の上に寝そべっている白人男性がいるが、例によって泳ぎたいとは思えない。だいたい砂というより砂利といったほうがよいのではなかろうか。よーやるわ、である。 『海亀休息中 5m以内に近よることを禁ず 亀にさわること禁断』というタテ看板を発見した。と、その向こうにホンマに海亀が目を瞑ってのた〜と甲羅干しをしている。体長90cm(現地風に言うと3フィートか)くらいはあるだろうか。テはたいそう感激したが、わしとしては、その感じがとてもわざとらしく思えた。カメが給料をもらって、そこで寝たフリをしているのではないか?とジャスイマンは思うのであった。
ブラックサンドビーチに佇むナビゲーター・テ
さて、快適にぶっとばしてボルケーノビレッジのB&Bに到着した。 ディナーの予約も入れてしまった。7時45分だそうだ。 ここはB&Bというよりはロッヂ風ホテルとでも言ったほうがよさそうなところだ。広い敷地内にアーリーアメリカン調(たぶん)の家がぽこぽこと建ち、そのうちの黄色い1軒に案内された。 しっかりと鍵を使って家の玄関を開けると暖炉をしつらえた共有スペースといったところがあり、そこの左手が我々の部屋だそうだ。 内装は一見ゴージャスな感じがする。あまり好みではないが、一瞬なぜか嬉しくなってしまった。ここは水道水は飲まないほうがよいらしく、洗面所スペースに飲み水のタンクが設置されている。ハワイイ島で2番目に大きな山にあるのだから、さぞかし美味しい湧き水があってもよさそうなもんだが、現実は違うようである。
あとで見ると、こっぱずかしくなります。
晩飯にもまだ時間があるので、軽くドライブとしゃれこんだ。 いくつかある火口をぐるりと廻っている道路を走ってみる。本来なら入場料金を支払わなければいけないようだけど、もう5時を回っているのでどうやらタダらしい。しかしまだ夕方という光ではなく、3時くらいの日差しに感じられる。 その眩しい光の向こうにマウナ・ロアが見えた。と言いたいところだが、実際は雲なのか山なのかわからなかった。いたく感激しているテから、あとで聞いたところによると、この付近が晴れていることは割とめずらしく、この2番目に高い山を拝めるのも貴重なことらしい。
さて、最初で最後の本格的レストランと言ってもよい今夜だ。 $50のT.C.2枚をフトコロにしのばせ、約90秒の道のりを歩いた。さすがに辺りは宵闇がただよっている。暖かそうな橙色の灯りが窓からもれている。 ドアを開け名前をつげると、この宿のカンバンらしい暖炉の前に通してくれた。たしかに、それなりに標高の高いところだから暖炉も必要なのかもしれないけれど、ちょっと大げさなんじゃないかと思ってしまう。が、やはり旅館のパフォーマンスとして必要なものなのだろう…てなことくらいはわしでもわかる。 とか何とか言いつつ、グラスワイン、ナントカチーズのフライパパイアソースがけ、ポテトのポタージュ、グリーンサラダブルーチーズソース、リブ肉のクリスピーフライ風コロッケ、ほかほかの全粒粉パン、すべてがうまかった。 さすがにデザートのケーキは甘すぎて、「To Go」をお願いしたが、今までいつも感じていた味の底に潜んでいる“甘み”がないように思う。アンジェラご推薦のカフェもよかったが、ここもうまい。 テはメインにオヒだかアヒだかの魚料理を頼んだところ、チーズフライ以外どれもハズレであまり良い印象ではないらしいが、わしは、おねえさんもシャキシャキしていて感じがよく、かなり満足したのであった。 と誉めている間にお勘定の時間になってしまった。〆て86.9ドル。チップをいれるとやはり100ドルになってしまった。ということで、こないだのカフェに軍配は挙がるのであった。外ではこおろぎ鳴いている。
(c)2001-2002 HaoHao
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