デ ィ ミ ッ ト ラ と シ ン プ ソ ン
う ま か 不 思 議 ギ リ シ ャ 篇 ● 5 月 27 日 ● ポ ロ ス 島
夜中にディミットラの騒がしい声とシンプソンの低いが少しドスの効いた話し声で目が覚めた。どうも隣のベランダからこちらのベランダに移ってきているらしい。一体どういうこっちゃと思いながらじっと息を殺していると、ヤパネヤパネと言いながら日除けをキコキコ上にあげているみたいだ。日本人め日本人めと言っているのか?巻き上げきったのか急に静かになった。何なんだ一体!
1ヶ月くらい ほんとは最大で210日なんだよ〜。そんなこと正直に言っちまうと何と思われるのやらと、ついウソを言ってしまう。しかしノチにフランスで会ったオーストラリア人女性(推定28才)は正直に会社を辞めてきたんですと訊きもしないのに言ってきたのは目からウロコだった。別にそう言われても批難しようなんて全く思わないし、逆にすがすがしいものを感じるものでした。
朝、目が覚めるとベッドにしばられている。顔を回すとシンプソンがナイフを持ってニタリと笑っていた。
な〜んてことはなく、ベランダに出ると日除けは上まであげられ、テがきのう拾い集めた枝で作ったリースは道に投げ捨てられている。そして見ず知らずの女性の水着が……。 今日はお湯だけもらって紅茶にしようとディミットラ家のカナリアベルを鳴らすと、シンプソンが現れ「おはよう、おはよう、どうぞ中へ」といやに愛想よく肩を叩いてくる。何事もなかったように「グゥ〜ドッモォーニンッ」とお湯を沸かしてくれた。例のドイツ人っぽいおじさんがコーヒーをいれてもらっている。 「何日くらい休みがあるの?」と訊いてくる。 「1ヶ月くらい」とお茶を濁しておく。 「えー!そりゃぁ長いねぇー」とツッコミを入れてくる。「僕らは今日帰るんだよ」 「お国はどちらですか?」さりげなく話題を変える努力を怠らない。 「スエーデンですよ。君たちは日本人だろ、1ヶ月ってのはホントに長いねぇー」と食いついてくる。「女房もこないだの冬、日本に行ってゲイシャガールの格好をして喜んでいたよ。彼女はあちこちに行きまくってるんだ」 「いそがしいですね」 「そう、いそがしい」と言いながらドイツおじさん改めスエーデンおじさんは、ディミットラからパスポートを出してもらう。この宿とは馴染みらしいフゼイである。「えーとね、これこれオーストリアのやつ。ほら、この写真ボクだろ?オーストリアで生まれ、スエーデンに住んでるんだ」自慢が終るとじゃまたと案外あっさり屋上に行った。
いれたての紅茶を持って我々も屋上に行こうと階段を登りかけると、ディミットラがおいかけてきて「今から屋上をウオッシングするから、あなたがたはうちのベランダで飲んでちょうだい」と再びベランダに連行され、彼女は錠をかけて出ていってしまった。しかし屋上にはスエーデンおじさんがいるのに我々はなぜ行ってはいけないのか?また、なぜ錠までおろされなければいけないのか? 朝食も食べ終りじっとしていると、寒い。風がきついようだ。いくら何でも鍵までかけんやろ、あれは単なる勘違いやろ。そう判断してもう部屋に帰ろうとコップを洗って置いた時「そんな所で何をしているの!あなたたち、お金もちでしょ!もうこの部屋から一歩もださないわ、覚悟しなさい!」と言ってあの愛想がいいのか腹黒いのか分からなかった女が近づいてくる。
てなこともやっぱりないわけで、「もう行くのー、ハバナイスデー」と言って素直に部屋から出してくれた。明日から行くつもりのモネムバシヤ行きのフェリーがあるか桟橋で調べるが、どうやらあの大揺れするフライングドルフィンしかないということが分かった。2人で9440ΔPX.明日10時発のを買った。その近くにあった人のよさそーなおじいさんおばあさんが商っている駄菓子屋っぽい店でクリームチーズパイ200ΔPX.をテの目を盗んで買ってみた。さくさくパイ、ほどよい甘さのクリーム。ん〜、これはうまい。あのUFOで買ったものなんかとは比べものにならんっ。最初からここで買っとけばよかった。この2日間がもったいない。良くてもあと1回しか食えんとなると口惜しい。 今日は部屋でのんびりするとしようと心に決めてベランダで絵はがきを書いている。この宿はなにもかもディミットラ1人でまかなっているのかと思っていたが、ただいま目の前をうら若き乙女が掃除をして通りすぎた。宿賃を払えなかった子かなにかを安くコキ使っているにちがいない。
などと悪口を考えていたら、テがやっぱり泳ぎに行きたいと言う。 例のスーパーで、ベーコン、コーラ、アムステルビール、Tzatziki(ΦΑΥΕ社の青いパッケージ)というもの(サワークリームっぽいイラストだ)、パン、アンチョビの缶詰め、合計1500いくらを2000で買ったら700いくらお釣をくれた。第1のビーチでバイクを止め、ひとんちのホテル(高そう)の海岸に降りる階段にこしかけて昼食としゃれこむ。Tzatzikiという食材がめっぽううまかった。察するところ、これが例の『気まぐれ亭』のスブラキに入っていたものと同類のもので、ギリシャのポピュラーな食材に違ない。なるほどなるほろぉと平らげたが、本を10ページほど読んだだけで結局泳がずに帰ってきた。 日なたにいたせいか、軽い日射病になったような感じがする。イメージ通り暑い国なのだ。昼間は家ん中でボーとしとくにかぎるよ。みんなよくハダカンボでバイクや車に乗ってられるもんだ。シャワー浴びて昼寝して気がついたら9時になっていた。
日除けがなぜか上がらなくなってしまった。ディミットラに今度こそ八つ裂きにされるかも知れんけど、クイズシランプリを決め込んでそのまま出立してやれ!と無視していたが、テが発見してしまった。バカ正直に直すべきだと主張するので「ムリじゃよ」と言いつつ裏側をガチャガチャやっていると簡単に直ってしまったから、もう恐いモンなしである。 さすがにスーパーマリオの店に行くのはもうイヤなので、今朝パイを食べたあたりまで出てみる。なんとスブラキ屋を発見した。ギロウイズピタとソーセージウイズピタ(この2つは例の軽いタイプ)、グリークサラダパンつき、アムステルビール1本という豪勢な晩メシだ。トルコ系の店なのかラジオから流れる曲がそれっぽい。安っぽいけれどスーパーマリオなんぞよりよっぽどうまい。2人で1610。安い。ノーチャージだった。またもや口惜しい。 およそ二月先に行くであろう北欧のために、古い知り合いがいるノルウエーにテが電話すると言う。国際電話はキオスクでできるらしい。00をつけて国番号、相手の番号だとキオスクの兄ちゃんは教えてくれた。つながるにはつながったが、よくわからん留守電みたいで目的は達せられなかった。どうやらがっくりきているようだ。元気づけるために、ピスタチオのアイス250ΔPX.を食ってやった(なんじゃそりゃ)。
(c)1995-2002 HaoHao
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